おふとん文庫

エモを探しています。

ケイゾク二次創作小説「金魚(仮)」

ケイゾクが大好き。愛余って二次創作小説を書いてしまったけど置き場がないのでここに。
真山徹みたいな男はどこにいますか??


八月某日。
本日は記録的な暑さに伴い熱帯夜となるでしょう。
そんなニュース音声が流れる中、捜査一課弐係の面々は相も変わらず無機質な部屋で各々の作業を各々が勝手に行っている。
経費削減により設定温度が定められている為、それはただの『温い風が噴出される機械』と化してしまっていたエアコンの起動音が虚しく響く。
隣席に置かれたハイスペックPCへ勝手に接続させた卓上扇風機の前で項垂れている男の口から思わず漏れ出した。
「あちぃ...」
これで何度目だろうか。数える気力もない。
この真山という男は心底、夏が嫌いだった。

「あんさんこれで八十三回目!はち じゅう さんかいめ、でっせ!?朝から飽きもせずなんっべんもなんべんもぉ!そない暑い暑い言うたら余計暑うなるやろぉ!?やめぇやぁ!」
そんなコテコテの関西弁を話す京大出身の男、遠山金太郎のウザったさに真山は気が狂いそうになり、椅子から立ち上がり言い放つ。
「あぁぁあー!もううるせー!お前暑苦しいんだよ!どっかいけよ京大!!」
「えー...二十一回目と...五十七回目に発せられた『あー!もう!せからしかー!』という言葉を『暑さからくる苛立ちによる言葉』としてカウント致しますと...正しくは八十五回目ですね」
横から冷静(?)な指摘をしてきた近藤という男はまた変なツールを使って暇を潰していたらしい。機械オタクめ。
「まぁまぁ...そんなにカリカリしないで、真山くんも遠山くんも。ほら、柿ピーでも食べて。あっ、カリカリだけに?うぷぷ」
と呑気に笑う野々村『元』係長の姿に真山は脱力し、力なく椅子に崩れ落ちた。
「ていうか、なんでこの部屋男しかいないわけ!?ねぇ!?むさい!むさいよ!?」
と嘆くと、横から
「確かに、暑苦しいですねぇ」
と賛同の声が聞こえる。
「そういえば、あの東大ちゃんと木戸さんの姿が暫く見えまへんなぁ?」

...たしかに。
柴田と彩のことを『女』として見た事は、決 し て なかったが...
それでも今は非常事態。砂漠の中では、例え泥水ですら『オアシス』となるのだ。

「おかしいなぁ?今日は柴田くん、きちんと十二時過ぎには出社してたんだけど...」
と言い、『元』係長はおもむろにテレビを消した。
どこが『きちんと』なのか全くわからないが、確かに今日は二人とも昼過ぎまではこの部屋にいた。
その証拠に、今朝彩が持ってきた新たな『継続』捜査中事件の調書が山積みに置かれているし、柴田のデスクの上はその調書が広げられ、推理途中...いや、犯人の目星が大体ついたものもあるのか、何冊か乱雑に散らばっている。

「柴田さんなら十五時頃、木戸さんに連れられてどこかへ行きましたよ?『えぇからえぇから!私に任せとき!』って、よくわからないことを仰って柴田さんを引っ張って行きましたけど...」
「近藤はん、よく見てますなぁ!さすが刑事や!...となると二時間もおらへんっちゅうのは、こりゃ職 務 怠 慢っちゅーやつやないんですかのぅ!?」
金太郎のわざとらしい関西弁を合図に一同がじとり、と野々村『元』係長に目をやったその瞬間。

バン!と音を立て、
「いやぁー!我ながらえぇ仕事したわー!傑作、傑作、大傑作!」
と声高らかに彩が部屋へと入ってきた。

「おい木戸。お前らね、堂々とさぼってんじゃないよ」
「はぁ?真山さんに言われたくないっちゅーねん!それになぁ!
...ふっふっふ。まぁそう言うてられるのも今の内だけや。なんなら感謝して欲しいくらいやわ」
と、不敵な笑みを浮かべ、ドカッと椅子へ座った。

「は?どういう意味だよ?」
ていうかあいつは?柴田は?
そう言おうとしたその瞬間。

「彩さぁーん...やっぱりこの服装、スースーしてて落ち着きませんー」

そんな気の抜けた、聞き慣れた声が入口の方から聞こえてきた。

目を向けたその瞬間。
ドキリとした。
白地に青色の模様、そして真っ赤な金魚が鮮やかに描かれた浴衣を纏った柴田がそこに立っていた。

呆気に取られていると、パタパタと駆け寄ってきて
チラリ、とこちらを見たかと思えば、おずおずと不安そうに彩の後ろに身を隠そうとしている。

「柴田さん、とってもお似合いですー!見違えちゃいました!」
と横から聞こえてきた声でようやく我にかえった。
『元』係長ですら『現』係長の艶かしいその姿に見惚れ、金太郎は顔を真っ赤にしてモゾモゾと椅子に座り込んでしまった。確かに...童貞には刺激が強すぎる。

「この彩さんの手にかかれば柴田みたいな処女も華麗な美女に大変身!!これで今日の夏祭りはもろたも同然!いい男ゲット☆間違いなしや!」

...は?なに?
理解が追いつかずにいると、惚けた声が聞こえてきた。
「なに、真山くん。若いのにそんな事も知らないのー?今日はチョー近くの神社で、あ、チョー夏祭りがあるんだよ?」
フフンと得意げな様子で話す『元』係長にイラつきながらも、
なるほどな。とようやく合点がいった。
つまり柴田は、今まさに彩の男漁りのエサとして使われようとしているのだ。

しかし、そんなことは自分には関係の無いこと。
「あ、そ。くだらねー。いくら着飾っても、柴田は柴田なの。わかる? ちょーっと綺麗な衣装着させられたからってこんなクッサイ頭してたら男なんて寄り付かねーよ」
そう、きひひと笑うと、彩の後ろに隠れている柴田の腕をグイと引っ張り、いつもの様に頭を掴む。
ほら、逝ってるよ?そんな粧し込む前に何とかしろよお前。な?
とペチンと叩きたいがために、柴田の頭の匂いをかぐ。

すると、予想に反して甘い甘い『女子』の香りがするではないか。

「あーあーあー!もう!やめぇや!
この私がご丁寧に風呂までいれて、せっかく頭も綺麗にセットしてやったんやから乱暴せんといて!」
彩はそう言うと、しっしっと俺を払い除け、何やら小言を言いながら柴田の頭を弄り出した。
「そうなんですよー。私、一昨日お風呂入ったばっかりなんで大丈夫ですーってお伝えしたんですけど...」
「あんた...このクソ暑い中一昨日て!アホちゃう!?ええか?柴田。風呂は毎日入るもんなんやで?」
と子供をあやすように彩は柴田を諭す。

この女、夏でも風呂に入らないのか...
ていうか、わざわざ当直用の風呂まで使ってそこまでするか?と彩の貪欲さに辟易とする。

「ふーん...ま、せいぜい頑張れば?俺には関係ないね」
と言い放ち自席へ戻ろうと背中を向けたその瞬間、彩から信じられない言葉が投げかけられる。

「何言うてんの?あんたも行くんやで」

...は?なんで?
思わずズッコケそうになったその瞬間、
「十七時十五分です!今日も終了。今日も終了」という終業を告げるアナウンスが虚しく室内に鳴り響いた。
「なんで俺なの?ねぇ、なんで?
何が楽しくて俺が、お前らと、仲良く夏祭りなんかに行かなきゃなんないわけ?ねぇなんで?」
別に誰でもいいじゃん。と、縋る様な気持ちで他のムサイ男達へと目を向けると、
雅ちゃんとデートだとかフラメンコのレッスンがあるとか王将が五十%割引中だとか聞いてもいないアフターファイブの予定を口々にし、そそくさと帰っていってしまった。

「お、俺も...あいにく今日は見たいドラマの再放送があるから。ゴリさん殉職シーンは見逃せないから。ふたりで楽しんできな、ね?」
「あら真山さん、偶然やわぁ。『太陽にほえろ!』ならしっかりビデオに録画予約してきたから安心しぃ」

そう言うと彩は、私も着替えるからちょっと待っとってーと本日誰も座ることのなかった来客用のソファと机の間から大きな紙袋を取り出した。

「おやぁ!?彩さんも浴衣かい!?
いやーこんな浴衣美女ふたりに黒ずくめのスーツ男が付いて行ったってお邪魔になるだけ、な?風情がないってもんよ。
しっかし残念だねぇ!僕も是非ともご一緒したかったんだけど、あいにく浴衣を持ってないもんでねぇ」
真山はなんとかこの難を逃れようと必死の思いで『行けない言い訳』を口にしたのち、帰路につこうと一歩踏み出した、その時。
彩のニターッとした笑みに凍りつく。

しまった。まさか自分で自分の首を絞めることになるとは...。
彩のその手にあるのは、男性用のグレーの浴衣だった。真山は彩の貪欲さがここまでとは見抜けなかった自分を恨み、顔を歪ませた。
すると、二人の攻防戦を不安そうに見ていた柴田から
「ほんとうに真山さんも夏祭りにいらっしゃるんでしょうかー...?」
という言葉が発せられた。
なんだよ。嫌なのかよ?
『カチン』ときてしまった自分にイラつきながらも、きっと暑さのせいなのだと言い聞かせた。

「なにゆうてんの、柴田。私がいい男を見つけた後、誰があんたの世話すんねん!」
そんな彩の言葉にがっくりと肩を落とした真山は、遂に観念したのだった。


********************

じっとりとした暑さの中、遠い昔に聞いたような覚えのある盆踊りの曲がうっすらと聞こえてくる。
色とりどりの提灯や屋台、多くの人で賑わうその光景に目を輝かせた柴田は
「わぁーっ!すごいですねぇ!彩さん、真山さん!見てくださーい!」
と言い、駆け出した。
真山は子供のようにはしゃぐ柴田が迷子になる前に彼女の名前を呼び牽制をかけつつも、どこか安心していた。
なぜなら、いつもであれば「ワンダフル!」とか「エクセレント!」とかなんとか言って喜んでついて来そうな柴田が、道中思いのほか乗り気でないように見え気になっていたのだが...それは杞憂だったようだ。
推測するに、初めての夏祭りデートは未来のダンナ様と一緒が良かったーとかそんなくだらない事でも考えていたのだろう。

キョキョロと周りを見回したかと思いきや突然、柴田が振り返り真山の腕をガシッと掴んだ。
「真山さーん!見てください!あっちにチョコバナナが売ってますよー!」
と言い、その方向へグイグイ引っ張っていく。
「馬鹿、馬鹿馬鹿!引っ張んな!馬鹿!ていうかなんでチョコバナナ?ねぇ?」
おい!木戸行くぞ!
と、はぐれないように声をかけようと顔を向けると、そこには既に男たちにチヤホヤされている彩の姿があった。

あんのやろう...。
真山の殺気に気づいたのか、彩はチラッとこちらに顔を向けると『邪魔するな』と言いたげに手でしっしっとあしらった。

柴田の興奮は暫く収まらず、真山は言われるがままに付いていく羽目になった。
こうなったら自分も楽しんでやる...そう腹に決めた真山は、型抜きでは真剣な柴田の邪魔をし、輪投げでは投げる直前にちょっかいを出し外れさせ、かき氷を一気に食べさせては頭を痛がる柴田を見て笑った。

「真山さーん!次はあれをしましょー!」
「はいはい......柴田。悪いが少し先に行っといてくれ」
さすがにニコチン切れ...と喫煙所へ向かおうとそう伝えると、柴田はまた不安そうな顔を覗かせた。
真山は残り一本となった煙草の箱で柴田の頭をコツンと叩き、
「...煙草。ね?すぐそこだから」
と顎で喫煙所を指した。
「わかりました...。真山さん...迷子にならないでくださいね?」
と真顔で言う柴田の頭をバシッと叩き、お前に言われたかないよとぼやいた後、喫煙所へ向かった。

真山は燻らせた煙草の煙の向こう側にいる、射的を見事に外しまくる柴田の姿を見て、
おいおい、それでも刑事かよ。
と内心つっこみ、ククッと笑う。

どれも定番の夜店ばかりだったが、柴田はまるで初めて見るかのようなリアクションをとり目を輝かせた。
そんな姿を見ているとふと、昔こんな風に目を輝かせていた少女の姿と重なった。

妹の沙織も夏祭りが好きで、よく連れて行けとせびられたものだった。
しかし両親が早くに亡くなり、唯一の家族となった幼い妹を必ず幸せにしようと強く誓い、がむしゃらに働きだしてからは、そんな余裕もなくなってしまった。
だいぶ寂しい思いをさせただろう。苦労もかけた。しかしそんな中でも沙織はひとつも弱音を吐かなかった。
少しずつだが生活も安定してきた頃、沙織が夜店で五匹の金魚を貰ってきた。
ゆらゆらと泳ぐ真っ赤な金魚をいつまでも、いつまでも眺めていた。

「金魚たち、ずーっと動いてるよー?」
「当たり前だろ?生きてんだから」
沙織はキラキラと輝かせた目を真山へ向け
「そうだよね、生きてるんだもんね。嬉しいんだよね」
と言うと、また金魚を見つめニコニコと笑った。
そんな後ろ姿が、そんな時間が真山にとって愛おしくて仕方がなかった。

来年は一緒に夏祭りへ行こうな。
そしてこれから沢山楽しい思い出を作ろう。今までを取り返すように。
生きててよかったと、思えるように。

そう、思っていた矢先だった。

...心の優しい妹が何故あんな目に合わなければならなかったのか。何度自問自答したところで答えは見つからない。
自分が刑事にならなければ標的になることもなかったのか。自分がもっと家にいてやれば巻き込まれることは無かったのか。
朝倉が死んだ今となっては、真実は誰にもわからない。

...いや、『真実』がいったいなんだというのだろう。
ただひとつ、わかっているのは...


その時、ドーン!という打ち上げ花火の音があがり、大きな歓声と共に我に返った。

...これだから夏は、嫌いだ。
そう誰にも聞こえない声で呟くと、煙草の空き箱をグシャっと握りしめた。

そろそろ柴田の元へ行こうと射的の屋台へ顔を向けた、その時。
フラフラと人混みの中へ入っていく柴田の後ろ姿が見えた。
「チッ、あの馬鹿...!」
真山はギリギリまで吸った煙草を灰皿へ押し付け、すぐさま後を追いかける。

しかし、打ち上げ花火に気を取られている人々の中をかき分け追いかけるがなかなか追いつけない。

「おい!柴田!!」
必死に名前を呼ぶが全く届かず、
浴衣に描かれた真っ赤な金魚がまるで泳ぎ回るように人波をすり抜けていく。

やっとの思いで追いついたその場所は、人混みから少し離れた所にある金魚すくいの夜店だった。

大きく溜息をつき呼吸を整えた真山は、
「おい、馬鹿。勝手にフラフラ行くなよなー」
と言い、しゃがみこんで呑気に金魚すくいをしている柴田の肩に手をかけた。が、

こちらに向けたその顔は、
沙織だった。


一瞬時が止まり、ひゅっと喉が鳴る。
一歩、二歩と後退り、今自分の身に降り掛かっているこの状況を理解しようと必死に頭を働かせる。

が...どうして?なぜ?
そんな言葉しか頭には浮かばないばかりか、情けないことに声に出すことすらままならず、ゴクリと音を立て唾を飲み込むのが精一杯だった。

つい先程まで響いていたはずの花火の音も人々の喧騒の音も聞こえない。じわりとかいた汗が頬を伝う。
キーンという耳鳴りの中立ち尽くしていると、沙織はスッと立ち上がりこちらを見つめ
「お兄ちゃん...どうして助けてくれなかったの?」
と哀しそうな表情を見せた。

「沙織...」
やっとの思いで呟くと、

すまない。俺は、お前を、
誰よりも幸せにしてやりたかったのに。
絶対に辛い思いなんてさせたくなかったのに。

そんな感情が溢れ出し、沙織の元へ引き寄せられていく。

あともう一歩で沙織に手が届く、その瞬間。

「真山さーん、随分とお楽しみじゃないですかー?僕とも遊んでくださいよー?」
と聞こえたかと思うと、見慣れたあの男が暗闇からぬっと現れ、沙織を抱き寄せる。

「朝倉...お前もしつこいねぇ」
そう言って真山はククッと笑う。
しかし目は鋭く光り、確かな殺意が宿されていた。

ギリッと噛み締めた歯が鳴る。
爪がくい込み僅かに血が滲んだ拳を振り上げようと、一歩踏み出したその瞬間。

ドンッと後ろからの突然の衝撃に、真山は思わずよろめいた。

「ま、やまさ」
背後から聞こえてきた絞り出したような声に驚き振り向くと、柴田が必死にしがみついていた。
その瞬間、
ドーン!と頭上に打ち上げられた花火の音が鳴り響き、辺りがパッと照らされる。
我に返り沙織と朝倉の方を向くとそこには、抱き合った浴衣のカップルがこちらを見つめ怯えていた。

真山はため息をつき、自身に絡まる柴田の手を丁寧に解くと、必死に冷静を取り繕い
「なに、どしたの」
そう言い、俯いている柴田の少し乱れた髪を整えた。

「真山さん...
何処かへ行ってしまうのかと...思いました」
真山はフッと笑い、
「そしたら誰がお前の世話すんの。
何処にも行かないよ」
そう告げるも、柴田は今にも泣き出しそうな顔で、
「すみません...私が金魚の浴衣なんか着たから...夏祭りに行きたいなんて彩さんに言ったから...辛いことを...その...」
か細い声で歯切れ悪くそう言った。

なるほどね。この女はそれで終始不安な顔を覗かせていたのか。俺のような男を心配して。
そう、今までの柴田の言動の合点がいったその瞬間、真山の胸は愛おしさと切なさで張り裂けそうになり、思わず柴田を強く抱き締めた。

「真山さん...?」
腕の中からそんな惚けた声が聞こえてくる。
必死に自分を探し回ったであろう柴田の頭からは少し汗の匂いがして、真山は本当に久々に『安堵』という感情で満たされた。

「柴田...一緒に...金魚すくいでも、するか?」

柴田は、真山から発せられたその言葉の意味を誰よりも深く理解していた。

「はい...!」
目にいっぱい涙を溜めて笑う柴田の手を握り、真山は夜店の方へと踏み出した。


********************

捜査一課弐係の面々は相も変わらず無機質な部屋で各々の作業を各々が勝手に行っている。
そんな見慣れたいつもの光景の中、ただ一つ普段とは違い、柴田の机の上に小さな金魚鉢が置かれていた。

「あんたなんでここで金魚なんか飼うねん」
と、結局いい男をゲット出来なかった彩に八つ当たりされる柴田と、まぁまぁと宥める元係長。

そんな他の面々を後目に、いつも通り卓上扇風機の前で項垂れていた真山だったが、目の前で二匹の金魚が気持ちよさそうに泳いでいるのを見て、

夏もまぁ、そんなに悪くないな。

そう、思ったのだった。

今が幸せだから今死にたいって話

兎にも角にも私は心配性だ。

これは結婚するまであまり自覚がなかったんだけど、結婚が決まってから浮かれまくるかと思いきや、とにかく不安もいっぱいだった。

この人と結婚して大丈夫かな?という不安ではないので、マリッジブルーという類ではないと思う。

結婚の手続きあれこれ新しい家への引越しあれこれ結婚式なんてもう不安だらけであれは大丈夫か?これは大丈夫か?ってひとりでパニックになるのに対して、
夫はB型らしく毎回「大丈夫やろ!」と言っているのを見て、自分が心配性だということに気づいた。私もB型なのに...!!!
悔しい。

正直、何が不安なのか?と聞かれると上手く言い表せられない。それでよく夫をイラつかせる。
この心配性な性格が仕事に役立つことも多々あるけど、まぁ疲れる。

基本的に自分が幸せになるというビジョンが描けないというのが理由の一つで、何か幸せな事が起きたら次は必ず悲しいことが起きるって思い込んでいる。

夫と付き合う事になった時は、いつか別れるなんて辛いなぁって思ったし(結果結婚したけど)
結婚が決まった時は、夫が死んじゃったり子供を作ろうとして出来なかったら辛すぎるなって思ったし、ことある事にとにかく不安にかられる。
いざ子供ができたら子供が死んだらどうしようって不安になると思う。(これはみんなそうか?)

夫が療養中とかまぁいろいろあるけど、
正直今が人生で一番幸せで、これ以上の幸せはないかもしれないって思ってて、
心配性な私は、この次はなにか辛いことが起きると思ったら不安で、
それなら辛い思いをする前に、
今幸せなうちに死にたいなって思う。

ただそんな理由で死ぬわけにもいかないし勇気もないから、これからもずっと不安なんだろうな。

「生きてる理由がわからない」という世界一無駄な悩み

Twitter 界隈の人たちが大好きで、
17歳女子高生の病み垢を作ってよく観察してるんだけど、
よく見かける悩みランキングTOP10には入るであろう
生きる理由がわからない

について、1人ずつクソリプを送りたい気持ちを抑え、ここで申し上げたい。

生きてることに理由などない!!!!!!


◇そもそも何故理由を求めるのか

Twitter 界隈以外でも、割とこの手の悩みを聞くことは多い。

自分で言うのもなんだけど、
人から悩み相談された時は、せっかく相談してくれてるんだし少しでも気持ちが楽になったり、解決に繋がるような話が出来たらいいなと思ってる。
だから、適当に持論を述べるのではなく、
相手の気持ちをできる限り理解する努力をした後に話を進めるようにしている(つもり)。
(そんなお節介のせいで友人と思ってた人から嫌われてしまった話はまた今度)

そう決めているにも関わらずこの手の悩みには、

生きる理由?それって悩む必要ある?
そもそも生きる理由に正解なんてある?ないよね?答えがないからそりゃいくら探しても見つからないよねー。答えがないのに悩んでもしょうがなくない?ていうか産まれてきたから生きてるじゃダメなの?

と早口で言ってしまう。ひどい。
その昔、夫にも似たようなことを言ってしまった。
その節は優しくできなくてごめんね。

なぜこの手の悩みが尽きないかは正直わからない。生きている理由がわからないからってなぜ落ち込まなきゃいけないのかいまいちピンと来ないから。
生きてる理由がわからない...
→死のう

いやいやいや!なんでっ!?!?!?
生きがいとかないけどぼーっと生きてたって良くない...???

生きてる理由がわからないっていう悩みが真っ先に出てくる時点で、それ以上悩みがないということは幸せな人生じゃない!?!?って思ってしまう。

いや、わかる。きっと生きてる理由がないのが悩み派にもきっと言い分があるのだろう。
その人たちなりに本気で辛いって言うのはわかる。「辛さ」への耐性の強弱ってあるもんね。


◇放っておいてもどうせいつか勝手に死ぬ

こういう悩みを言う人は、
あまり死というものを身近に感じることが少ないのか、もしくは身近すぎるのかな?

人の死に直面した時私は、
どうせ死ぬんだったら生きてる間はできる限り楽しく生きたいし、無駄に悩むのはやめよー」と思った。

一時期葬儀屋で働いていたので、
人の死後の姿は平均より多く見てきたと思う。
いろんな人がいた。
今までどんな人生を歩んできたかとか関係なくその人にとって死んだらそこで終わり。
あとは周りの人がどうするか、どうなるか。
ただそれだけ。
そう思った。思いのほかあっさりなんだなって。

もしかしたらこの呆気なさを悲観して、
「こんなんなら生きてても意味無い」
って思う人もいるかもしれない。
それなら確かに理解できる。

結果は同じなのに真逆の発想に繋がるって不思議だな。
人の思考はやはりアンビバレンス。


◇呆気ないからこそもっと適当に生きてもいい

こんなこと書いてるけど私は生粋のエリート根暗でクソ陰キャだから、
「どうせなら楽しまなきゃ損じゃない!?wwwwwwwwwポジティブポジティブ(☝ ՞ਊ ՞)☝ウェーイwwwww」みたいなタイプとは一生分かり合えないし、とにかく嫌い^^

ただ、悩まなくてもいいことでわざわざ辛い思いする必要はないんじゃないかな?と思うだけ。

まぁ、苦悩している自分が好きで、わざわざ悩んでる悲劇のヒロインタイプは好きにすればいいと思う。悩んでることが幸せならさ。

悩みたい時は悩んで、
悩みたくない時は適当に現実逃避して、
楽しい時は楽しんで、
そんなふうに過ごしてたら気づいたら死んでるさ。

最近のブログ、有益になりすぎ問題

ブログ。

それは、「個人の日記などを、簡便な方法で作成し、公開することができるウェブサイト」の総称。


◇ 有益な情報ばかりの素晴らしいブログたち

先日私はこのブログで、長らく心の中に溜めていたモヤモヤを言語化することによって気分転換を図った。

ブログなんて久しくやっていなかったもんだから、年甲斐もなく少しワクワクしてしまった。

他のみんなはどんなブログ書いてるんだろー?( ◜◒◝ )
なんて呑気な顔して、はてなブログの公式ページへ飛んだ。

そこに並ぶのは、まぁーそれはもう
世のため人の為となるハチャメチャ有意義なブログ」たち。

そりゃあ公式のトップページに並ぶんだもん。
それなりの「理由」があるから多くの人に読まれてるわけで。
それはわかっている。

にしても、これはもはや私にとっての
「ブログ」ではない。


◇ 誰のためでもない、自分のために書く

ブログが流行りだした2004年頃、
私は、最も自己顕示欲が強いであろうお年頃、そう!高校生だった。

みんな、自分の(だっさい)HPとか、前略プロフィールとかやっててさぁ。
そこで、多感なお年頃の繊細な気持ちをみんな「日記」として綴っていたわけよ。

内容?
それはそれはもう
無意味!!!!!!!!
中身はすっからかんよ。
今だったら、隙あらば自分語り乙www
って言われる内容が多かったように感じる。

モテ自慢、病み自慢、夢小説、この世に存在する必要の無いポエムのオンパレード。
もちろん私もしっかりポエムっていた。

みんな誰のためでもなく、ただ自己顕示欲を満たすため、つまり自分のためだけに書いていたように感じる。

それは正しく、
個人の日記をウェブサイトで記録したもの」だった。


◇「無意味」をもっとくれよ。

広大なインターネットの海に浮かぶ
有象無象な文章たち。

私はそんな、
誰が興味あるんじゃーい!こんな内容!!!
っていうブログが好きだった。

みんさまという謎の神様を信仰する人の布教ブログ。
ただただ彼氏とのラブラブ生活や愚痴が書かれたブログ。
コッサンというなぜかカタコトのモテない男とネカマ男との駆け引きブログ。
群れない俺カッケー自慢の童貞ブログ。

どれもこれも下らなくて最高に面白かった。

当時は日記カテゴリの方が賑わっていたように感じる。
新着ランキングとかで探せばそんなブログ、
ゴロゴロ見つかった。

しかし、今では見つけることが困難になってしまっていた。

いや探せばきっとある。
あるんだろうけど、SNSの普及により、
多くのそういう自分語り好きの人種は、
ブログより気軽に書けるTwitter へ流れてしまったのではないだろうか。
(だから私はTwitter が好きなのかもしれない)


こうなったら、
とことん無益なブログを書いていきたい。
願わくば、
そんな絶滅危惧種である
我こそは、無益なブログをやってまーす!
って人を集めて、同盟でも組みたい。

もっともっと、
無意味を発信していきたい。

進化の度合い、二歩と半分。

昔自分で書いた、
平沢進先生の「コヨーテ」という楽曲の考察が、「握手(っ´ω`)っ⊂(´ω`⊂ )」って感じの内容だったので転載。
そりゃ過去の自分が書いてんだから共感するわな。



愛が止まらないので、
今日はこちらの『コヨーテ』という楽曲について、考えてみたいと思います。
CDverよりも、
このイントロのが好きなコヨーテちゃん。

音楽にキョーミのない方からしたら、
この曲何?てゆーか誰?
となるでしょうから簡単な説明をば。

この『コヨーテ』という曲は、
私の敬愛するアーティスト平沢進氏(以後、師匠)が、テクノポップバンドP-MODELとしての活動を休止した後、
89年に出したソロ名義でのデビューアルバム『時空の水』に収録されています。

こちらのアルバムには、
戸川純他豪華ゲストが参加しており、
中でもこの『コヨーテ』は、
ミュージシャンや劇作家として活躍する、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以後、ケラ)がコーラスとして参加しています。
アウトロの語り部分で、
物語の主人公【コヨーテ】として、
「はいっ!!!」と元気よく返事をする
金髪の人です。

とまぁ、参加アーティストの説明は以上に致しまして、この『コヨーテ』という曲は一つの《お話》となっています。
1回聴いたくらいで(あるいは端から聴いていなければ)、歌詞はわからないでしょうから
ここに載せたいところですが、
それはあまりよろしくなさげなので、
知りたい方はこちらへどーじょ。

簡潔にまとめると...
日照りの村で、最後の水を飲んでしまい人間に追われることになったコヨーテは、
逃げる内に人間が知らなかった新しい道を開拓し、湖にたどり着くもそこで力尽きてしまう。
コヨーテを追っていた人間は、
食料(コヨーテ)と水を手に入れ万歳。

と、私の解釈が間違っていなければ
この様なお話なのだけど、
コヨーテという動物について調べてみると、
どうやらインディアンの伝承では、
コヨーテはタバコ・太陽・死・雷をはじめ、
新しい文化を人間社会へもたらす存在として崇められているそうな。
(wiki大先生ありがとう!)


↑狼に似てる。可愛いコヨーテちゃん。

師匠とケラ。
当時の2人の関係性をあまりよく知らないから自信はないんだけど、
もしかしたら師匠は、新しい文化の先駆者になって欲しいと思って、ケラにコヨーテ役をさせたのかな?と思った。
だとしたら、なんだか素敵だ。

そうやって考えると、
その後、師匠の曲からタイトルをとった
フローズン・ビーチ」で、岸田国士戯曲賞という若手劇作家の登竜門と呼ばれる戯曲賞を受賞したことが非常に胸熱展開。

この、フローズン・ビーチという曲も大好きなんだけど、
まだよく理解できない部分が殆どなので、
それに関してはまた今度。



ちゅーのが昔のわしの意見。
平沢進先生の曲を理解できるようになる日が
いつか来るのだろうか。

幸せという名の強迫観念

昭和の終わりに産まれ、
早30年が過ぎた。
昭和どころか、気づけばなんと
平成が終わろうとしている。

5月までに死んでしまう可能性もあるが、
このままいけば2つの年号を駆け抜けた事になる。
流石にそのくらい生きれば、
そりゃあもう色々あった。

確かに色々あったはずなのに、それを
「色々」としか表現できない。

何故なら私は、非常に忘れっぽい。
びっくりするくらい忘れていく。
中学高校の時のエピソードなんて
さっぱり思い出せない。
唯一思い出せるのは、
寺山修司の詩集を読みながら
「涎は人間の作ることの出来る
1番小さな海です」
と友達とふざけあった事くらい。

この忘れっぽい性格のせいで、
傷付けてしまった人もいる気がする。
だとしたらごめんなさいとは思うけれど、
開き直ってしまっている部分もある。

小学生の時、図書館で痴漢されて、
親へ言いつける前にそのことを忘れてしまうほどに脳の機能が低いのである。
もうしょうがないのよ。

そんな私でも、忘れられない「色々」もある。

まぁ割とありがちではあるけれど、
小学5年生の夏休み初日、
ラジオ体操をする為に早起きすると
母がいなかった。
昨日から帰ってないという。
その後母は帰ってきたが、
仲がいいと思っていた両親が聞いたことも無い声で怒鳴り合いを初め、
母に連れられ家を出ることになった。

当然離婚し、
母との生活が始まったが
度々父親が金の無心に現れ、
その都度大喧嘩を見る羽目になる。
思えばXデーから高校卒業までは
そんな日々だった。

父の事も母の事も好きだった。
私にまでお金を貸してくれと言ってくる父親を見るのも、
そんな父親を激しく罵る母親を見るのも
耐えられなかった。
嫌いになりたくなかったから、私は逃げた。
取り敢えず家族の問題から目を背けたかった。
あー、もう思い出したくないやめておこう。

大学進学後、いつのまにか父は死んでいた。
一人で死なせ、お墓もわからない状況なのは
本当に申し訳ない。後悔してももう遅い。

父が死んだことにより、
母は憑き物が落ちたように
父への嫌悪感を示さなくなった。

そして今では母と、あの頃はこうだったよねーと、話したりなんかして生きている。

女手一つで育ててもらって、
母には本当に感謝している。
結婚が決まり、とても喜んでくれている。

これだけ見ると、
昔のことは水に流して、トラウマも乗り越えましたーって顔して生きている。

でも本当は、こんな夜中に一人ブログ書くくらいには今でもゴリゴリに引きずっている。

きっと母は、苦労かけた一人娘が結婚し、
新しい家庭で幸せになって欲しいと
心から願っているだろう。

だから私は幸せにならなくてはいけないのだ。
私が不幸になると、母が悲しむ。
私が不幸になると、主人が責められる。

では万が一不幸になってしまった場合は?
それでも私は幸せでいなくてはいけない。
私が不幸になると、
私の大事な人が不幸になってしまう。

それならきっとこの先
私は一生幸せでしょう。