おふとん文庫

エモを探しています。

ケイゾク二次創作小説「金魚(仮)」

ケイゾクが大好き。愛余って二次創作小説を書いてしまったけど置き場がないのでここに。
真山徹みたいな男はどこにいますか??


八月某日。
本日は記録的な暑さに伴い熱帯夜となるでしょう。
そんなニュース音声が流れる中、捜査一課弐係の面々は相も変わらず無機質な部屋で各々の作業を各々が勝手に行っている。
経費削減により設定温度が定められている為、それはただの『温い風が噴出される機械』と化してしまっていたエアコンの起動音が虚しく響く。
隣席に置かれたハイスペックPCへ勝手に接続させた卓上扇風機の前で項垂れている男の口から思わず漏れ出した。
「あちぃ...」
これで何度目だろうか。数える気力もない。
この真山という男は心底、夏が嫌いだった。

「あんさんこれで八十三回目!はち じゅう さんかいめ、でっせ!?朝から飽きもせずなんっべんもなんべんもぉ!そない暑い暑い言うたら余計暑うなるやろぉ!?やめぇやぁ!」
そんなコテコテの関西弁を話す京大出身の男、遠山金太郎のウザったさに真山は気が狂いそうになり、椅子から立ち上がり言い放つ。
「あぁぁあー!もううるせー!お前暑苦しいんだよ!どっかいけよ京大!!」
「えー...二十一回目と...五十七回目に発せられた『あー!もう!せからしかー!』という言葉を『暑さからくる苛立ちによる言葉』としてカウント致しますと...正しくは八十五回目ですね」
横から冷静(?)な指摘をしてきた近藤という男はまた変なツールを使って暇を潰していたらしい。機械オタクめ。
「まぁまぁ...そんなにカリカリしないで、真山くんも遠山くんも。ほら、柿ピーでも食べて。あっ、カリカリだけに?うぷぷ」
と呑気に笑う野々村『元』係長の姿に真山は脱力し、力なく椅子に崩れ落ちた。
「ていうか、なんでこの部屋男しかいないわけ!?ねぇ!?むさい!むさいよ!?」
と嘆くと、横から
「確かに、暑苦しいですねぇ」
と賛同の声が聞こえる。
「そういえば、あの東大ちゃんと木戸さんの姿が暫く見えまへんなぁ?」

...たしかに。
柴田と彩のことを『女』として見た事は、決 し て なかったが...
それでも今は非常事態。砂漠の中では、例え泥水ですら『オアシス』となるのだ。

「おかしいなぁ?今日は柴田くん、きちんと十二時過ぎには出社してたんだけど...」
と言い、『元』係長はおもむろにテレビを消した。
どこが『きちんと』なのか全くわからないが、確かに今日は二人とも昼過ぎまではこの部屋にいた。
その証拠に、今朝彩が持ってきた新たな『継続』捜査中事件の調書が山積みに置かれているし、柴田のデスクの上はその調書が広げられ、推理途中...いや、犯人の目星が大体ついたものもあるのか、何冊か乱雑に散らばっている。

「柴田さんなら十五時頃、木戸さんに連れられてどこかへ行きましたよ?『えぇからえぇから!私に任せとき!』って、よくわからないことを仰って柴田さんを引っ張って行きましたけど...」
「近藤はん、よく見てますなぁ!さすが刑事や!...となると二時間もおらへんっちゅうのは、こりゃ職 務 怠 慢っちゅーやつやないんですかのぅ!?」
金太郎のわざとらしい関西弁を合図に一同がじとり、と野々村『元』係長に目をやったその瞬間。

バン!と音を立て、
「いやぁー!我ながらえぇ仕事したわー!傑作、傑作、大傑作!」
と声高らかに彩が部屋へと入ってきた。

「おい木戸。お前らね、堂々とさぼってんじゃないよ」
「はぁ?真山さんに言われたくないっちゅーねん!それになぁ!
...ふっふっふ。まぁそう言うてられるのも今の内だけや。なんなら感謝して欲しいくらいやわ」
と、不敵な笑みを浮かべ、ドカッと椅子へ座った。

「は?どういう意味だよ?」
ていうかあいつは?柴田は?
そう言おうとしたその瞬間。

「彩さぁーん...やっぱりこの服装、スースーしてて落ち着きませんー」

そんな気の抜けた、聞き慣れた声が入口の方から聞こえてきた。

目を向けたその瞬間。
ドキリとした。
白地に青色の模様、そして真っ赤な金魚が鮮やかに描かれた浴衣を纏った柴田がそこに立っていた。

呆気に取られていると、パタパタと駆け寄ってきて
チラリ、とこちらを見たかと思えば、おずおずと不安そうに彩の後ろに身を隠そうとしている。

「柴田さん、とってもお似合いですー!見違えちゃいました!」
と横から聞こえてきた声でようやく我にかえった。
『元』係長ですら『現』係長の艶かしいその姿に見惚れ、金太郎は顔を真っ赤にしてモゾモゾと椅子に座り込んでしまった。確かに...童貞には刺激が強すぎる。

「この彩さんの手にかかれば柴田みたいな処女も華麗な美女に大変身!!これで今日の夏祭りはもろたも同然!いい男ゲット☆間違いなしや!」

...は?なに?
理解が追いつかずにいると、惚けた声が聞こえてきた。
「なに、真山くん。若いのにそんな事も知らないのー?今日はチョー近くの神社で、あ、チョー夏祭りがあるんだよ?」
フフンと得意げな様子で話す『元』係長にイラつきながらも、
なるほどな。とようやく合点がいった。
つまり柴田は、今まさに彩の男漁りのエサとして使われようとしているのだ。

しかし、そんなことは自分には関係の無いこと。
「あ、そ。くだらねー。いくら着飾っても、柴田は柴田なの。わかる? ちょーっと綺麗な衣装着させられたからってこんなクッサイ頭してたら男なんて寄り付かねーよ」
そう、きひひと笑うと、彩の後ろに隠れている柴田の腕をグイと引っ張り、いつもの様に頭を掴む。
ほら、逝ってるよ?そんな粧し込む前に何とかしろよお前。な?
とペチンと叩きたいがために、柴田の頭の匂いをかぐ。

すると、予想に反して甘い甘い『女子』の香りがするではないか。

「あーあーあー!もう!やめぇや!
この私がご丁寧に風呂までいれて、せっかく頭も綺麗にセットしてやったんやから乱暴せんといて!」
彩はそう言うと、しっしっと俺を払い除け、何やら小言を言いながら柴田の頭を弄り出した。
「そうなんですよー。私、一昨日お風呂入ったばっかりなんで大丈夫ですーってお伝えしたんですけど...」
「あんた...このクソ暑い中一昨日て!アホちゃう!?ええか?柴田。風呂は毎日入るもんなんやで?」
と子供をあやすように彩は柴田を諭す。

この女、夏でも風呂に入らないのか...
ていうか、わざわざ当直用の風呂まで使ってそこまでするか?と彩の貪欲さに辟易とする。

「ふーん...ま、せいぜい頑張れば?俺には関係ないね」
と言い放ち自席へ戻ろうと背中を向けたその瞬間、彩から信じられない言葉が投げかけられる。

「何言うてんの?あんたも行くんやで」

...は?なんで?
思わずズッコケそうになったその瞬間、
「十七時十五分です!今日も終了。今日も終了」という終業を告げるアナウンスが虚しく室内に鳴り響いた。
「なんで俺なの?ねぇ、なんで?
何が楽しくて俺が、お前らと、仲良く夏祭りなんかに行かなきゃなんないわけ?ねぇなんで?」
別に誰でもいいじゃん。と、縋る様な気持ちで他のムサイ男達へと目を向けると、
雅ちゃんとデートだとかフラメンコのレッスンがあるとか王将が五十%割引中だとか聞いてもいないアフターファイブの予定を口々にし、そそくさと帰っていってしまった。

「お、俺も...あいにく今日は見たいドラマの再放送があるから。ゴリさん殉職シーンは見逃せないから。ふたりで楽しんできな、ね?」
「あら真山さん、偶然やわぁ。『太陽にほえろ!』ならしっかりビデオに録画予約してきたから安心しぃ」

そう言うと彩は、私も着替えるからちょっと待っとってーと本日誰も座ることのなかった来客用のソファと机の間から大きな紙袋を取り出した。

「おやぁ!?彩さんも浴衣かい!?
いやーこんな浴衣美女ふたりに黒ずくめのスーツ男が付いて行ったってお邪魔になるだけ、な?風情がないってもんよ。
しっかし残念だねぇ!僕も是非ともご一緒したかったんだけど、あいにく浴衣を持ってないもんでねぇ」
真山はなんとかこの難を逃れようと必死の思いで『行けない言い訳』を口にしたのち、帰路につこうと一歩踏み出した、その時。
彩のニターッとした笑みに凍りつく。

しまった。まさか自分で自分の首を絞めることになるとは...。
彩のその手にあるのは、男性用のグレーの浴衣だった。真山は彩の貪欲さがここまでとは見抜けなかった自分を恨み、顔を歪ませた。
すると、二人の攻防戦を不安そうに見ていた柴田から
「ほんとうに真山さんも夏祭りにいらっしゃるんでしょうかー...?」
という言葉が発せられた。
なんだよ。嫌なのかよ?
『カチン』ときてしまった自分にイラつきながらも、きっと暑さのせいなのだと言い聞かせた。

「なにゆうてんの、柴田。私がいい男を見つけた後、誰があんたの世話すんねん!」
そんな彩の言葉にがっくりと肩を落とした真山は、遂に観念したのだった。


********************

じっとりとした暑さの中、遠い昔に聞いたような覚えのある盆踊りの曲がうっすらと聞こえてくる。
色とりどりの提灯や屋台、多くの人で賑わうその光景に目を輝かせた柴田は
「わぁーっ!すごいですねぇ!彩さん、真山さん!見てくださーい!」
と言い、駆け出した。
真山は子供のようにはしゃぐ柴田が迷子になる前に彼女の名前を呼び牽制をかけつつも、どこか安心していた。
なぜなら、いつもであれば「ワンダフル!」とか「エクセレント!」とかなんとか言って喜んでついて来そうな柴田が、道中思いのほか乗り気でないように見え気になっていたのだが...それは杞憂だったようだ。
推測するに、初めての夏祭りデートは未来のダンナ様と一緒が良かったーとかそんなくだらない事でも考えていたのだろう。

キョキョロと周りを見回したかと思いきや突然、柴田が振り返り真山の腕をガシッと掴んだ。
「真山さーん!見てください!あっちにチョコバナナが売ってますよー!」
と言い、その方向へグイグイ引っ張っていく。
「馬鹿、馬鹿馬鹿!引っ張んな!馬鹿!ていうかなんでチョコバナナ?ねぇ?」
おい!木戸行くぞ!
と、はぐれないように声をかけようと顔を向けると、そこには既に男たちにチヤホヤされている彩の姿があった。

あんのやろう...。
真山の殺気に気づいたのか、彩はチラッとこちらに顔を向けると『邪魔するな』と言いたげに手でしっしっとあしらった。

柴田の興奮は暫く収まらず、真山は言われるがままに付いていく羽目になった。
こうなったら自分も楽しんでやる...そう腹に決めた真山は、型抜きでは真剣な柴田の邪魔をし、輪投げでは投げる直前にちょっかいを出し外れさせ、かき氷を一気に食べさせては頭を痛がる柴田を見て笑った。

「真山さーん!次はあれをしましょー!」
「はいはい......柴田。悪いが少し先に行っといてくれ」
さすがにニコチン切れ...と喫煙所へ向かおうとそう伝えると、柴田はまた不安そうな顔を覗かせた。
真山は残り一本となった煙草の箱で柴田の頭をコツンと叩き、
「...煙草。ね?すぐそこだから」
と顎で喫煙所を指した。
「わかりました...。真山さん...迷子にならないでくださいね?」
と真顔で言う柴田の頭をバシッと叩き、お前に言われたかないよとぼやいた後、喫煙所へ向かった。

真山は燻らせた煙草の煙の向こう側にいる、射的を見事に外しまくる柴田の姿を見て、
おいおい、それでも刑事かよ。
と内心つっこみ、ククッと笑う。

どれも定番の夜店ばかりだったが、柴田はまるで初めて見るかのようなリアクションをとり目を輝かせた。
そんな姿を見ているとふと、昔こんな風に目を輝かせていた少女の姿と重なった。

妹の沙織も夏祭りが好きで、よく連れて行けとせびられたものだった。
しかし両親が早くに亡くなり、唯一の家族となった幼い妹を必ず幸せにしようと強く誓い、がむしゃらに働きだしてからは、そんな余裕もなくなってしまった。
だいぶ寂しい思いをさせただろう。苦労もかけた。しかしそんな中でも沙織はひとつも弱音を吐かなかった。
少しずつだが生活も安定してきた頃、沙織が夜店で五匹の金魚を貰ってきた。
ゆらゆらと泳ぐ真っ赤な金魚をいつまでも、いつまでも眺めていた。

「金魚たち、ずーっと動いてるよー?」
「当たり前だろ?生きてんだから」
沙織はキラキラと輝かせた目を真山へ向け
「そうだよね、生きてるんだもんね。嬉しいんだよね」
と言うと、また金魚を見つめニコニコと笑った。
そんな後ろ姿が、そんな時間が真山にとって愛おしくて仕方がなかった。

来年は一緒に夏祭りへ行こうな。
そしてこれから沢山楽しい思い出を作ろう。今までを取り返すように。
生きててよかったと、思えるように。

そう、思っていた矢先だった。

...心の優しい妹が何故あんな目に合わなければならなかったのか。何度自問自答したところで答えは見つからない。
自分が刑事にならなければ標的になることもなかったのか。自分がもっと家にいてやれば巻き込まれることは無かったのか。
朝倉が死んだ今となっては、真実は誰にもわからない。

...いや、『真実』がいったいなんだというのだろう。
ただひとつ、わかっているのは...


その時、ドーン!という打ち上げ花火の音があがり、大きな歓声と共に我に返った。

...これだから夏は、嫌いだ。
そう誰にも聞こえない声で呟くと、煙草の空き箱をグシャっと握りしめた。

そろそろ柴田の元へ行こうと射的の屋台へ顔を向けた、その時。
フラフラと人混みの中へ入っていく柴田の後ろ姿が見えた。
「チッ、あの馬鹿...!」
真山はギリギリまで吸った煙草を灰皿へ押し付け、すぐさま後を追いかける。

しかし、打ち上げ花火に気を取られている人々の中をかき分け追いかけるがなかなか追いつけない。

「おい!柴田!!」
必死に名前を呼ぶが全く届かず、
浴衣に描かれた真っ赤な金魚がまるで泳ぎ回るように人波をすり抜けていく。

やっとの思いで追いついたその場所は、人混みから少し離れた所にある金魚すくいの夜店だった。

大きく溜息をつき呼吸を整えた真山は、
「おい、馬鹿。勝手にフラフラ行くなよなー」
と言い、しゃがみこんで呑気に金魚すくいをしている柴田の肩に手をかけた。が、

こちらに向けたその顔は、
沙織だった。


一瞬時が止まり、ひゅっと喉が鳴る。
一歩、二歩と後退り、今自分の身に降り掛かっているこの状況を理解しようと必死に頭を働かせる。

が...どうして?なぜ?
そんな言葉しか頭には浮かばないばかりか、情けないことに声に出すことすらままならず、ゴクリと音を立て唾を飲み込むのが精一杯だった。

つい先程まで響いていたはずの花火の音も人々の喧騒の音も聞こえない。じわりとかいた汗が頬を伝う。
キーンという耳鳴りの中立ち尽くしていると、沙織はスッと立ち上がりこちらを見つめ
「お兄ちゃん...どうして助けてくれなかったの?」
と哀しそうな表情を見せた。

「沙織...」
やっとの思いで呟くと、

すまない。俺は、お前を、
誰よりも幸せにしてやりたかったのに。
絶対に辛い思いなんてさせたくなかったのに。

そんな感情が溢れ出し、沙織の元へ引き寄せられていく。

あともう一歩で沙織に手が届く、その瞬間。

「真山さーん、随分とお楽しみじゃないですかー?僕とも遊んでくださいよー?」
と聞こえたかと思うと、見慣れたあの男が暗闇からぬっと現れ、沙織を抱き寄せる。

「朝倉...お前もしつこいねぇ」
そう言って真山はククッと笑う。
しかし目は鋭く光り、確かな殺意が宿されていた。

ギリッと噛み締めた歯が鳴る。
爪がくい込み僅かに血が滲んだ拳を振り上げようと、一歩踏み出したその瞬間。

ドンッと後ろからの突然の衝撃に、真山は思わずよろめいた。

「ま、やまさ」
背後から聞こえてきた絞り出したような声に驚き振り向くと、柴田が必死にしがみついていた。
その瞬間、
ドーン!と頭上に打ち上げられた花火の音が鳴り響き、辺りがパッと照らされる。
我に返り沙織と朝倉の方を向くとそこには、抱き合った浴衣のカップルがこちらを見つめ怯えていた。

真山はため息をつき、自身に絡まる柴田の手を丁寧に解くと、必死に冷静を取り繕い
「なに、どしたの」
そう言い、俯いている柴田の少し乱れた髪を整えた。

「真山さん...
何処かへ行ってしまうのかと...思いました」
真山はフッと笑い、
「そしたら誰がお前の世話すんの。
何処にも行かないよ」
そう告げるも、柴田は今にも泣き出しそうな顔で、
「すみません...私が金魚の浴衣なんか着たから...夏祭りに行きたいなんて彩さんに言ったから...辛いことを...その...」
か細い声で歯切れ悪くそう言った。

なるほどね。この女はそれで終始不安な顔を覗かせていたのか。俺のような男を心配して。
そう、今までの柴田の言動の合点がいったその瞬間、真山の胸は愛おしさと切なさで張り裂けそうになり、思わず柴田を強く抱き締めた。

「真山さん...?」
腕の中からそんな惚けた声が聞こえてくる。
必死に自分を探し回ったであろう柴田の頭からは少し汗の匂いがして、真山は本当に久々に『安堵』という感情で満たされた。

「柴田...一緒に...金魚すくいでも、するか?」

柴田は、真山から発せられたその言葉の意味を誰よりも深く理解していた。

「はい...!」
目にいっぱい涙を溜めて笑う柴田の手を握り、真山は夜店の方へと踏み出した。


********************

捜査一課弐係の面々は相も変わらず無機質な部屋で各々の作業を各々が勝手に行っている。
そんな見慣れたいつもの光景の中、ただ一つ普段とは違い、柴田の机の上に小さな金魚鉢が置かれていた。

「あんたなんでここで金魚なんか飼うねん」
と、結局いい男をゲット出来なかった彩に八つ当たりされる柴田と、まぁまぁと宥める元係長。

そんな他の面々を後目に、いつも通り卓上扇風機の前で項垂れていた真山だったが、目の前で二匹の金魚が気持ちよさそうに泳いでいるのを見て、

夏もまぁ、そんなに悪くないな。

そう、思ったのだった。